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セックスフレンドじゃない

読書

 識者によれば、ミステリの時代は終わりを告げ、今まさにSFの時代が到来したのだという。長い冬の時代を越え、よくがんばったものだ。かくいう僕も、もちろんSF大好きっ子である。エヴァの影響でハーラン・エリスンを読もうとして即座に挫折したり、タイトルがカッコいいという理由だけでスキズマトリクスを読もうとして即座に挫折したり、「ケルベロス第五の首」にももちろん挫折し、イーガンに到っては挫折するのが目に見えているのでもはや手に取ることさえしていないほどのSF好きだ。
 そんなことを言ってしまうと、僕のSF好きを疑う人もいるかもしれない。まともに読んでないじゃんと。
 喝!!!!!
 どんなことを言おうとも、僕の性の目覚めが小松左京のエスパイであったことを否定させはしない。内容は全く覚えていないし、そもそもなぜそんな本が家にあったのかもわからないが*1、そんなことは僕が初めて読んだ少女漫画が「星の瞳のシルエット」であるという不思議の前には、どうでもいい些事だと言えよう。全然関係ないのだが、あまり本を読まない友人の前でSF、という単語を用いたところ、なかなか意味が通らなくて難渋した。どうやら最近の若者の間ではSF=サイエンス・フィクションよりも、SF=セックス・フレンドの方が一般的らしいのだ。これはガチだぜ!何というばらまき戦略か……!彼ら彼女らに敬意を表し、僕はSFのことを「すこし・ファック」と呼ぶことにする。俗に言う、先っぽ理論である。
 話を戻そう。とにかくSFが流行っているらしいのだ。読むべきだろう。とりあえずは、円城塔Self-Reference ENGINE伊藤計劃虐殺器官」のどっちかかな、などと考え、今回は「虐殺器官」を選んだ。タイトルが好みではないので、最初はなかなか気が進まなかったのだけど、ちょっと立ち読みしてみると、これはただの近未来軍事SFではないような気がしたので、購入。その予感は裏切られることはなかった。面白すぎて一気読みしてしまった!
 この作品で描かれる悪夢的な未来は、決して新しいものではない。この時代に生きているものなら、誰でも薄々は「虐殺器官」的な世界を想像したことがあるはずだ。しかし、誰もこんな風には描けなかった。SFのレーベルから発売されている小説で、舞台設定も未来なんだけど、そこで描かれているのは、圧倒的に現在。どこか、いつか、の話じゃない。僕らの、僕らの戦っているこの戦場についての物語だ。僕らが荷担し続けている戦争、についての物語だ。いま、ここが、すでに比喩ではなく戦場であること。それを改めて露にしたこの作品は、ゼロ年代のリバース・エッジ……という惹句を思いついたのだけど、リバース・エッジ実はよくわかんなかったんだよな、pinkとヘルタースケルターは面白かったけど。
 現実から遠く離れたものを描くのもSFだろうけども、現実がどれだけ僕たちから遠いところまで辿りついたかを描くこともまたSFなんじゃないか。こういう想像力、僕はありだと思うね、うん……。

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

 

*1:家族に読みそうなやつがいない……