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下ネタを巡る幾つかの葛藤、もしくは世界同時セックス論

 最近、めっきり下ネタが苦手になってしまった。もともとおれは下ネタにはかなり厳しいルールをもって臨むタチだったから、そうなってしまうのもある程度やむをえないことなのかもしれない。厳しいルールというのは、一言で言えば、下ネタには夢がないとダメだよね、ということ。夢のない下ネタっていうのは生々しいというか肉々しいというか、そういうもの。最近彼氏にフェラーリ褒められるんだ〜☆とか、好きな体位は宣教師スタイルなんだ〜☆、だとか、そういう話を女の子がしてたとしてもね、おれはそういうの聞きたくないのよ。そういうのをにやにやしながら聞いてる自分も嫌なのよ。

 例えば、複数プレイの話をするんでもね、おれは3Pとか4Pとかの話は聞きたくないわけ。なぜって3Pとか4Pだったらひょっとするとありえちゃう話だし、ほんとうにそいつが体験した話かもしれないじゃない。そうじゃなくて、おれが聞きたい下ネタっていうのは、1,000Pとか10,000Pとかそういう話なんだよね。1,000人っていうキロ単位の数がどのようにつながってゆくのかってとこにパズル的な愉しみを見出していきたいわけ。ファンタジーだよね。まあ、ライオンよりティラノザウルスが好きな子供だったから、地上に存在していないものに想像を巡らせるほうが好きだし、得意なんだ。

 でも、最近、そんな自分のことがだんだん信じられなくなってきたんだ。だってさ、1,000とか10,000は無理にしても、100Pくらいだったらソフトオンデマンドあたりがもう出しちゃってるわけじゃない。まあ、あれは100Pっていうよりは、2P×50って感じで全然つまらなかったんだけど、とにかくそういう映像をみてさ、ああ、何だか自分の想像力は間違っていたんじゃないのかって思ったんだよ。1,000より10,000、10,000より100,000なんだって言ってさ、果ては60億Pだなんてとこまでいっても、まあそれは全然大した話じゃないよね。スケールはどんどんデカくなっても、方向性は全然変わらないわけだから。実際に60億Pをリアルに解像できるだけの妄想力があればいいけどさ、残念ながらおれにそんなもんはないし、それができないならただデカい数字言って満足してるだけじゃない。

 そんな風に思っちゃうともう、下ネタを楽しむことなんてできないよね。おれはただ話を際限なくデカくすることで、かえって下ネタに含まれる性的成分を薄くしようとしてただけなんじゃないか、性的な話題から全力で遁走しようとしていただけなんじゃないかって、そんな疑問にとりつかれてしまったら、もうファンタジーはファイナルになってしまう。

 んで、ファイナルにさせないためにはどうすればいいかっていうと、もう答えはふたつしかないよね。ひとつは、自分の過ちを素直に認め、誰とやっただのやらないだの、そういった俗な話に全力で耳を傾ける。そして、もうひとつは、妄想力を鍛え上げて、60億Pを脳内で完璧に描き切るという修羅の道だ。当然、おれは後者を選びたい。だって、それはきっと誰も登ったことのないエベレストだぜ。その頂を征したなら。世界同時革命なんて古いよ、21世紀は世界同時セックスの時代なんだぜなんて口走っても、誰もおれを憐れみの目で見ることなんてできなくなっているはずなんだよ。