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おれたち秘境探検隊―大電波塔に眠るまぼろしの美獣―

とある事情で、東京都民と暮らしている。僕のようにわがままな人間が他人と共同生活を営もうというのだから、そりゃあ、不満は当然のようにたまってくる。
何よりも腹が立つのは、都民が何かにつけて僕を田舎者呼ばわりすることだ。確かに、僕の地元はひどい田舎にあって、本屋もCDショップもレンタルビデオ屋も無いような文化的砂漠だったけれども、だからといって都民にバカにされるいわれはない。
だいたい、この都民は都民といっても足立区民なのだ。別に足立区をバカにするつもりはないけれど、やはりどうしても引っかかるものがある。足立区なんて、ほとんど埼玉みたいなもんじゃないか。いや、別に埼玉をバカにするつもりも毛頭ないのだけれども……。
とにかく、僕はムカついたのだった。
「何を言っているんだい、君は。だいたい、日本で一番田舎なのは、どう考えても東京なんだぜ」
売り言葉に買い言葉というやつで、僕はそんなことを口走ってしまう。
都民の反応は極めて冷ややかなものであった。
「かわいそうな人」
「あなたのような田舎者には、この素晴らしいビルディングたちも、蟻塚か何かにしか見えていないのね」
だそうだ。僕はますます頭に来てしまった。
そこまで言うのなら、東京が田舎であるということを証明してやろうじゃないか。

そういうことになった。



雲一つない青空にインターナショナルオレンジが映える。
東京タワーは、東京スカイツリーがその背丈をいまにも追い抜こうというこの2010年にあっても、以前と変わらぬエレガンスを保っているように見える。
東京スカイツリーが首尾良く完成したとしても、東京の№1ランドマークとして君臨するのは、やはり『この』東京タワーでしかありえないのではないだろうか、と思わせるような圧倒的な自信がそこにはあった。
過去からやってきた未来だけが持つ、奇妙な穏やかさと無根拠な明るさが同居した大電波塔。その真下にあって、都民は全く腑に落ちない、といったような表情で僕のことをみつめていた。

「全く理解できないわ。ここのどこが田舎だっていうの。内藤博士の素晴らしい設計は、建築から50年が経過した今でも全く色あせていないじゃない」
都民はまだ、南京錠に『家族』と書かれたこのキツさには気がついていないようだ。
いかにも東京人らしい、都民の冷ややかな視線にさらされても、僕は実のところ全く焦っちゃいなかった。
正直余裕だった。
僕には自信があったのだ。
十五年前、十二歳だった僕がみた東京タワー。1995年当時でさえすでに、あの塔の時間は完全に停止していた。十二歳だった僕が、その生涯で目にしてきたあらゆるものの中で、もっとも古びていた風景が東京タワーだった。どう見てもあれは昭和の風景だった。あらゆるものごとがひっくりかえってしまった、あの1995年にあってさえ、この東京タワーの空気は静かに停まっていたのだ。それを再び動かすことなんて、誰にもできるわけがない。
これから、ここで、我々が眼にするはずの東京の「ほころび」を想像して、僕は静かに興奮していた。



はたして、僕の予想は完全にあたっていたようだ。
東京タワーの土産物屋の、この圧倒的なまでのキッチュさ加減。
どんな田舎の土産物屋を訪ねても、このセンスをお目にかかることはおそらくできないだろう。
都民はだんだんと俯いて歩くようになり、ついに僕の眼をみて喋ることさえできなくなってしまった。さきほどまで、冷凍光線のような視線を僕にぶつけていたのが嘘のようだ。都民の心に決定的なダメージを与えていたのは、「東京」の文字が大きく刺繍されたキャップだったようだ。
ほんとうのことをいえば、東京タワーの土産物屋で買い物をするのはほとんどが僕のような田舎者なのだから(十二歳だった僕は、ここで「大志」と書かれた石ころをうっかり買ってしまったのだ!)、都民がショックを受ける必要はどこにもないのだけど、そんなことにも気がつくことができないくらいに都民は弱っているようだった。
ちょっとやりすぎちゃったかな、などと思い始めていた僕の眼に、そうした全てを完璧にチャラにしてしまうほどに奇跡的な風景が僕の眼に飛びこんできたのだった。

幻の白美獣、その名も、ファーファ

1 :白菜菊菜:2000/03/22(水) 20:56
わけあって、ちいさい子供にファーファというぬいぐるみを
買ってあげることになりました。
洗剤か、柔軟材のキャラクターで白いクマちゃんだそうです。
ずっとさがしているのですが、
どこに行っても売っていません。もしかして非売品?
ワシがあまりおもちゃ屋とか知らないせいかも知れません。
どこで売っているか、ご存知の方はいらっしゃいますか?
フリーマーケットなどを見てまわってるのですが、
期限は後1ヶ月しかないのに到底望みなしみたいです。
お願い!

356 :白菜菊菜:2009/11/28(土) 00:42:02
みなさん、どうも
昨日とうとうファーファのぬいぐるみをゲットすることができました
半年前に、家の近くの公園で拾ったものを交番に届けたのですが
持ち主が現れず私のものになりました
少し汚れていたのでアタックで洗ってからプレゼントしましたが
もう18才になってしまった相手は約束を覚えていませんでしたがとても喜んでいました
スレッドを立ててから10年近く経ってしまったけど探し続けたかいがあった
みなさんありがとう

http://gimpo.2ch.net/test/read.cgi/doll/953726167/l50



十年の歳月を超えて、ファーファは待ち続けていたのだった。*1
いかなる時代のものであっても、受け入れてしまう東京の包容力がそこにはあるような気がした。塔は男根の隠喩なんてことを言う人もいるけれど、こと東京タワーに限っては全く逆の器官を表象しているとしか思えない。
僕はすっかり興奮してしまった。ねえすごいよこれは、ファーファだよファーファ、これを十年間探し続けた人がいたんだよ、いやすごいな東京タワーは。東京の誉れだな。
都民はファーファについてはまるで思い入れのない様子だったが、僕が東京万歳!というテンションになったことで、だんだんと自信を取り戻すことができたようだ。
そうして我々は、東京タワーの麓にある増上寺にお参りをして(初詣だった)、晴れ晴れとした気分で現在の住居であるところの神奈川県へと帰ったのだった。




※前回までの探検記録
おれたち秘境探検隊Vol.1―東京の廃村―
おれたち秘境探検隊Vol.2―羽田空港、夢想家の密林―
おれたち秘境探検隊Vol.3―死の海岸と秘境の果て―

*1:こんなことを書いてしまっては、もうこの文章自体が完全に台無しになってしまうのだけど、僕が勝手に勘違いをしていただけで、実際のところファーファは現役のマスコットキャラクターのようだ。iphone用の拡張現実型アプリ(?)まで出ているほどに現代に適応している。結局のところ、情報感度の低い人間は僕ひとりだったということのようだ。言い訳めいてしまうけれども、東京タワーのあのゲームコーナーにはいかなる最新型のキャラクターをも化石に見せてしまうような空気がある。いや、空気という以前に、レースゲームは「Suzuka 8 hours 2 (1993年)」、パンチングマシーンは「KNOCKDOWN'90(1991年)」というのがここのラインナップなのだ。僕が勘違いしてしまうのもやむをえないことだろう。ゲームコーナーの外側には、イデオンだかジムだかよく分からないデザインのロボットがたたずんでいた。下腹部に子供が乗り込むためのコクピットが用意されており、100円玉を投入すると、その場でくるくると回りはじめる。東京タワーのゲームコーナーには他に色違いのライトグリーンモデルも設置されていた