この町に生まれたら……宿根木

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佐渡ヶ島、宿根木。
ここは本当に静かな町で、歩いていても自分の足音と小川のせせらぎしか聞こえない。たまに我々のような観光客がやってきて、やかましくおしゃべりをまき散らしてみたりもするんだけど、あまりにも町が静まりかえっているせいで、みんなすぐに黙り込んでしまう。カメラのシャッター音さえ気がとがめてしまうくらいだ。
宿根木2(SDIM0549)

宿根木3(IMGP8281-1)

知らない町を訪れるたびに、『もし、自分がこの町で生まれ育っていたら、どんな子供になっていたんだろう』なんてことを考えてしまう。故郷の以外のどこで生まれたとしても、きっと今の自分とは全然違う性格になっていたのだろう。そうやって、本来ありえたかもしれない人生を空想するのを好むのが、今の自分が身につけている性格で、我ながら本当に暗いな、やっかいな人間になってしまったなあ、と思う。今の自分とは全く違う子供を育ててくれそうな町としては、これまで神戸と富士吉田が圧倒的な二強だったのだけど、宿根木もなかなか人格に与える影響がおおきそうな町ではある。これほど静かな町に生まれ育ったら、やはりもの静かな子供になるんだろうか。それとも反動でものすごくおしゃべりな子供になるんだろうか。よくわからないが、ともかく今のような喋り方はしていなかっただろうし、こんな風な文章の書き方もしなかっただろう。なんとなく思うのだけど、宿根木で育っていたほうが、文章はうまくなっていたような気がする。
宿根木4(SDIM0550)

宿根木5(SDIM0555)

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ちなみに神戸と富士吉田については、どちらも山の存在感が圧倒的な町だなあ、という印象を持っている。神戸は六甲山、富士吉田は富士山がそれぞれ壁のようにそびえたっている。とくに神戸の場合、海との山の間が近く、平地が狭いので余計に山が大きく感じられる。あんな大きなものと常に相対して暮らすだなんて、わりあいに平べったい場所で暮らしてきた僕には全く信じられない。ちなみに僕の弟はいま神戸で働いているはずなのだが、六甲山の圧力に押しつぶされてはいないだろうか。
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兄は心配だ。
宿根木8(SDIM0559-2)
これは三角家という建物で、舟大工のテクニックを応用して建てられているということだ。ほんとうに三角だし、けっこう鋭角でもある。狭い土地を有効活用するK.U.F.U. だということなのだけれども、この鋭い空間をいったいどのように使っているのか、全く想像がつかない。中からのぞいてみたいけれど、この三角家は現役の民家なので、もちろんそんなことはできない。個人的には、この三角の舳先にトイレがあるといいな、と思う。あの三角におさまって用を足す、というのは何だかすごく魅力的だ。そこでは宇宙が感じられるような気さえする。想像してごらん、天国なんてどこにもなくて、実家には三角形のトイレがあったとしたら……。
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たいした根拠もないのに、佐渡ヶ島は暗くて寂しい場所なんだろうな、なんて思い込んでいたけれど、実際にはとても穏やかで美しい島だった。写真に撮らなかったけども、心に響いた景色は幾つもあった。内海府の海岸線、真野湾の奇岩、世界の果てを思わせるような灯台のホテル、迷子になった我々に優しく道を教えてくれた高校生……全てが最高だった。ぜひまた訪れてみたい。
そして、寒ブリを食べたい。

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