おーい磯野〜!野球やろうぜ!

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僕はあまり性格のよい子供ではなかったから、小学校の卒業式で「将来の夢は、プロ野球選手です!」などと宣言してしまうような級友たちのことを、腹の底では馬鹿にしていた。こんなド田舎の少年野球チームのレギュラーにさえなれないのに、どうしてプロ野球になりたいなどと言うことができるのか、不思議で仕方がなかった。歳をとって、あのころを振り返ってみれば、ほんとうに馬鹿だったのは誰なのかがよくわかる。
僕はそのとき、自分の夢を隠した。役人になりたいとか、サラリーマンになりたいとか、何を言ったのかをもう覚えていやしないが、ともかくほんとうになりたいものは言わなかったのだ。ほんとうの夢を口にしたところで、誰にも理解してもらえやしないと思っていたのかもしれない。それはもしかするとある面では事実であったかもしれないが、仮にそうだとしても、やはり間違っていたのは僕の方だった。
嘘つきの才能がないのに自分を偽ってばかりいると、やがて演じていたはずの自分が本性にすりかわってしまう。というよりも、演じる自分以外の自分など、もとよりどこにも存在しないのだ。嘘のつもりで話した言葉は、例外なく真実になる。だから僕は、他人からみて、それがどんなに馬鹿馬鹿しく、滑稽に見えたとしても、やはり堂々とプロ野球選手になりたいと言うべきだったのだ。いや、別にプロ野球選手になりたかったわけではないのだけれども。